The days which
earth people strike out into |
列車番号7501
地球発19時50分 急行 夕凪
この公園って、こんなに広かったっけ…
一人で来るようになって、そんなこと思うようになった。
私にとって、妹のような彼女が、それ以上のかけがえのない存在だったこと、失って気づいたのだった。
あの日、見送りに行った私の前で、彼女は今にも泣きそうになりながら、それでも精一杯の笑顔で言ってみせた。
「行ってきます」
去りゆく列車の窓から、いつまでも手を振っていた。
元気でね、今度休みが取れたら遊びに行くからね…それまでの、ほんの短い別れのはずだったのに。
月面基地で大規模な爆発事故…そんなニュースが飛び込んできたのは、彼女が発ってから、まだほんの一週間くらいしか過ぎていない日だった。
あろうことか、それは彼女が新しい生活を始めると言っていたブロックに隣接したところだった。
あわてて連絡を取ろうとしたが、電話もメールも全く通じない。
爆発のあったブロックとその周辺で、多数の犠牲者と、消息不明になっている人がいるらしい。
彼女は無事なのか、それとも…
限りない夢と勇気を抱いて旅立っていった。それなのに、彼女が憧れた月の都は、彼女を幸せにしてくれないというのか。
まさか、そんなこと…私には信じられない。信じたくない。
「お姉さんに、私と一緒に月へ行ってもらえたら…」
迷った挙句、私は彼女のそんな思いに、結局応えることができなかった。やっぱり、一歩踏み出す勇気がなかった。
周りの人は言った。
「君は運が良かったんだよ」
本当にそうだろうか。
確かに、事故には巻き込まれなかった。
でも、このまま、こんな形で彼女と会えなくなってしまうことが、運が良かったなんてとても思えない。
開業したばかりの月面基地新駅も、爆発の影響を受け、しばらく閉鎖されていたが、先日やっと列車の運行が再開された。
そして、今日も頭上を、優月鉄道の列車が轟音とともに通り過ぎる。
ゆっくりと過ぎゆく客車の窓…明日、私はあの客車の乗客になる。
今度は私の手のひらの中に、急行夕凪号のきっぷがある。
あの日、私が一緒に行かなかったことが、本当に運が良かったのだとすれば、今、私がすべきことは、これしかない。
彼女の無事を信じている。そして再会できたなら、今度こそもう決して迷わない。